昔、こんなことしてました②

昔、京都の周山にある内科でアルバイトをしていました。その経緯は話すと長くなるので割愛しますが、そこでの話を少しだけ。

大学があったのが京都府の日吉町というところで、とんでもない田舎だったのですが、周山というところはそれと同じくらいのど田舎でした。まあ、出勤ルートとしては日吉から車で山道を20分ほど。鹿とか猪とかうりぼうとか、まあタヌキやイタチは普通かな…。猪鍋の看板とかあったりして(笑)。

私の仕事は、内科に受診する患者さんに鍼灸治療をすることでした。2時間か3時間くらいのアルバイトだったので、はやさき鍼灸治療院での外来ペースなら3人か4人診れるかなぁというところ。せいぜい忙しくても6人くらいが限界かと思うのですが、まぁびっくり。来るわ来るわ…Σ(゚Д゚)。お年寄りの大集合ですよホント。15人とか20人とかガンガンやってきました。勿論、鍼灸師は私1人。てんやわんや(笑)。鍼うつスピードは鍛えられたかも(笑)。

そんな中でも衝撃的だったのが、腰が曲がりすぎて身体が半分に折れ曲がっているおばあさんの腰痛治療です。とにかく折れ曲がっているので、顔も見ることがままならないんです。通常、円背の強い患者さんは、横向きに寝てもらったりするのですが、何しろ折れ曲がっているので、横向きだとベッドに乗らない( ;∀;)。う~ん、表現が難しいのですが、膝より下に頭があるんです。横向きに寝かせると、ひどい「く」の字。「く」がくっついちゃってる。腰もお腹も出すのが大変だし、体位を簡単に変えられない。そして何よりも無理な体制をとったり、むやみに鍼をして筋肉の緊張をとってしまうことで症状を悪化させてしまう可能性も考えられました。

東洋医学では、すべての状態に意味があると考えます。必要があって今の状態になっているのだから、それに逆らうような治療は逆効果になることも考えられます。このため、このおばあさんの腰痛治療も、腰に施術することよりも全身のバランスを整えることを中心に考えて手や足にあるツボに鍼やお灸をする治療をしていました。

本人は、鍼してもらうと身体が少しまっすぐになる気がするって言っていました。見た感じは変わっていないんですけどね(笑)。でも顔のむくみや顔色は確かに良くなっていましたよ。今でも元気なんでしょうか。ちょっぴり懐かしいです。

お年寄りを見ていると、みなさん全身で今までの生活や人生を語っているなぁって思います。体が半分に折れ曲がっているこのおばあさんも、毎日毎日畑で仕事をしているって言っていました。彼女にとって、この姿勢でいることの方が畑で仕事をするには楽だったのかもしれません。お年寄りを見る機会が多かったおかげで今では来院された患者さんをみると、なんとなく職業や生活が分ったりします。そして皆さん、仕事や趣味を続けるために痛みを和らげて欲しいと訴えられます。長年の仕事の影響で腰が曲がってしまっても、それでも仕事を続けたいと思うことがすごいなぁって思います。そりゃぁ、応援するしかないでしょう?

そのうち私も鍼灸師っぽい体系になるんでしょうか?鍼灸師っぽい体系ってどんなんなんでしょう??あと30年ほどしたらわかるのかもしれませんね。

はやさき鍼灸治療院 杉本